梨木香歩・著『西の魔女が新んだ』を読みました。
有名な作品なのでタイトルは知ってましたが初見です。
印象としてはすごく素敵な物語ですね。
今まで読んだ小説の中で一番優しい物語だったかもしれない。
子供の頃、特に思春期の頃に読んでいたら今とは違った印象を持っただろうなと思いますが、それは叶わないので大人になった今の私が感じた感想文を書いていきましょう。
『西の魔女が死んだ』の読書感想文
【タイトル:物事の受け止め方次第で景色は変えられる】
楽して生きることに対して否定的な気持ちを持ってしまうけれど、楽して生きることは決して悪いことではない。
そう感じさせてくれたのは西の魔女の自然な生き方、ひいては『何でも自分で決める』ことの大切さが伝わってきたからだろう。
何でも自分で決める。
それは物事の受け止め方次第で景色は変えられるということかもしれない。
私は苦手なことはしたくないし、嫌な思いもしたくない。
楽して生きていけるならそうしたいと常々思っている。
一方で、楽して生きるのはどこかズルい気もしてしまう。
みんな何かしら苦しんでいて、そんな中で自分だけが抜け出してしまうことに申し訳なさや後ろめたさを感じてしまうからだ。
しかし、そんなイメージを壊してくれたのが西の魔女だった。
西の魔女は決して嫌な思いをしていないわけではない。
けれども、そんな事を感じさせないのはどこまでも自然に、いま置かれている状況でどうするべきか、何をしたいかを考え決断しているからだろう。
そんな西の魔女の生き方から楽して生きるというのは苦しい思いをしないことではなく、自分に素直に生きることだと気づいた。
置かれた環境の中で、どうすれば自分が自然体でいられるのか。
それを考え、決断することが出来れば、それが楽して生きることにつながっていくのだろう。
私が考え方を改めることが出来たのは主人公まいが自分とは立場も何もかもが違うからかもしれない。
まいの抱く感情は理解できるけれど、共感はできなかった。
けれども、だからこそ自分を客観視できたし、彼女を通して私もいつの間にか魔女修行をしていたような気分にもなれたと思う。
自分と違う立場や価値観を持つ人がいるから、物事の見方や受け止め方を工夫することが出来ることに改めて気づかされた。
不安や不平、不満を感じたとき、答えを急がないようにして、自分が楽して生きられる答えを常に求めていきたいと思う。
そのためにも何でも自分で決めることを私も大事にしたい。
(805文字)
優しさに隠された西の魔女の言葉の強さ
読んでいる間ずっと「温かくて優しいお話だなー」と感じていました。
悪く言えば、展開や激しさがないのでつまらないというか物足りなさを感じるところもありますが、世界観がよく伝わってきて素敵な作品だと思います。
西の魔女こと“おばあちゃん”は達観していて、全てを見透かしているような雰囲気で、だからこそ余裕があって言動に優しさが溢れているのかな。
けれども放つ言葉には鋭さがあって、例えば、私が印象に残ったのは『シロクマがハワイより北極で生きる方を選んだからといって、だれがシロクマを責めますか。』という言葉。
どっちを選ぶと問われたら、私はハワイの方が快適に過ごせると感じますが、シロクマにとっては北極の方が適しているわけですね。
私がシロクマに「なんであんな寒い所にいるの?バカじゃないの?」と言ったところで、シロクマは「いやー、オラは毛むくじゃらでハワイじゃ暑いのよ」と言われたら、もう彼を責める理由なんて見つからないない。
シロクマは北極で生きていくと自分で決めていて、ハワイよりも北極の方が楽に生きられる。
ただそれだけのことなんですね。
他のセリフもそうですが、全体的に西の魔女の言葉は哲学めいたところがあって、思わずハッとさせられる場面が多かったです。パンチラインも強烈だった。
きっと弁論大会とかサイファーとかやったらめっちゃ強いんじゃないかな?笑
魔女修行の意味は『感情のコントロール』
まいはおばあちゃんの元で魔女修行をするわけですが、魔女と言ってもファンタジーな能力のことではありません。
魔女修行がなんなのかは明記されていないので想像の話になりますが、私が受けた印象としては『感情のコントロール』のことなのかなと思いました。
都会で学校で周りの友達との関係に息苦しさを感じる“まい”と、田舎でひとり自由に暮らしている“おばあちゃん”。
まいにとっておばあちゃんは対極にいる存在だったからこそ、学びも多かったのでしょう。
中学生の思春期真っただ中で、子供から大人に変わっていく時期は感情が乱れるのが当たり前。
そんなまいの状況や気持ちを理解して、“魔女修行”という言葉で『感情のコントロールの仕方』をしたおばあちゃんの巧者ぶりを感じますね。
しかも『早寝早起きをすること』から始まりましたからね。
「こんな当たり前のことが大事なのか?」と思うけれど、気づいたら「そんな当たり前のことが大事なんだな」となっているから不思議です。

自分と対極の人から何を感じよう
主人公は中学生の女の子で、私は大人の男。
本を読んでいてさすがに感情移入することはなかったけれど、それでも自分と対極にいるような人の立場から学べることはあると改めて分かったことは、この本を読んでちゃんと意識しないといけないなと思いました。
この物語を読んだ時「気分屋の女の子で読んでてイライラした」で感想が終わってたら、私の成長はないのでしょうね。
どちらかと言えば私は“おばあちゃん”寄りのタイプなので、感情を出せるタイプの人と出会った時に上手く立ち回って、何か一つでも学べる部分を見つけられるようになりたいですね。
まぁ私も感情やその場の気分に流されて、時間を無駄にしたりすることは未だにありますけど。
深夜ラジオを聴いて、気づいたら上柳昌彦さんの声を聴いている回数は数知れずです (゚∀゚)<アサボラ…ケ
とりあえず、自分にない感覚に触れた時はしっかり考えられるようにはしたいですね。
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