又吉直樹『火花』の読書感想文-美しさの正体&あの漫才が教えてくれた大発見

久しぶりに読書感想文でも書こうかなと。

今回読んだのは第153回(2015年上期)で芥川賞を受賞した又吉直樹さんの『火花』。

以前にも何度か読んだことがあったのですが、今回は読書感想文を書くことを意識して、読み進めてみました。

あらすじなどは他に任して、いきなり感想文から書きますね^^




又吉直樹『火花』の読書感想文

【タイトル】心の中心を貫く瞬間に出会うために

『火花』はとても掴みどころがない物語だ。

この物語を読み終えるほんの十数ページ前に確かに胸が熱くなったはずなのに、本を閉じると何だかスッキリしていない。

まるでパッと光った花火のような、けれども花火ほどの圧倒的な存在ではなかったような、残るのは感じたものを言葉で表現できない己の無力さ。

ただ一つ言えるのは、人と人がぶつかることで何かが存在したということだろう。

 

『火花』の物語を象徴するキーワードを一つ挙げるなら『対照的』という言葉。

それは徳永と神谷もそうだし、徳永と山下、神谷と作業服を着た男もそう。

一方の存在とは対極にいる人物がこの物語の展開を広げている。

そして、相反する二人がぶつかる時、まるで火花が散るように物事が進んでいく。

決して交わることがない人物が出会うことが、これほどまでに面白く、激しく、切ない気持ちにさせることを知った。

また、時にその衝突がほんの一瞬だけ光を感じさせてくれて、感動を与えてくれることも知った。

スパークスの最後の漫才はまさにそれだった。

「あえてな反対の事を言うと宣言した上で、思っていることと逆のことを全力で言うと、明確に想いが伝わるんちゃうかなと思うねん」

最後までややこしいこの言葉の先に待っている漫才は、無力な人間が見せた一生に一度の光だったように思える。

 

しかし、はっきりとした対照的な存在が際立つ一方で、常に曖昧な状態が続いていることは変わらない。

掴みどころがない、読み終えた後にスッキリしないと感じるのは、この物語が常に曖昧だからだろう。

それは『笑い』とは何なのか?『人間』とは何なのか?に答えがないからかもしれない。

答えがないものに対して常に考える。そして、その答えを探す手がかりを自分以外の存在と出会い、ぶつかる事で見つけていく。

徳永を通じて、生きることそれ自体を考えさせられた。

『火花』は永遠ではない。けれども、そこには確かに答えがある。

この事実を知ったことを幸せと感じるべきか、それとも不幸だと感じるべきか、私はこの先ずっと考え続けることになるだろうと悟った。

 

私は人とぶつかる時、あるいはぶつかると予想できた時、意図的に避けてしまうクセがある。

そのおかげで傷つくことは少ないが、同時に熱を持つ事もない。だから、明快な答えに出会ったことも少ない。

私はこの物語のように曖昧な存在なのだろう。

それでも、いつか必ず『火花』を読んで感じた、私の心の中心を貫く瞬間に出会いたいと願う。

たとえ空しくても、勘違いだったとしても、その一瞬、確かにそこに存在したと堂々と感じられる人でありたい。

(文字数:1059字)

『火花』を読んで意味がよくわからないのはなぜ?

読書感想文を書くとよそ行きの文章になるなー…まぁいいや。感想文だし。

それと一応説明しておくと「この事実を知ったことを幸せと感じるべきか、それとも不幸だと感じるべきか、私はこの先ずっと考え続けることになるだろうと悟った。」と書いたのは私の性格?気質?面倒くさいところ?が原因です。

興味がある方は別記事でご確認を。

 

さて、『火花』という小説は解釈がとても難しい作品だと感じました。

難しいというのはいろんな解釈ができてしまうと言えばいいのかな?

「コレが答えだ!」と言えない、『白と黒の間にも色があるんだよ』みたいな。

「それって灰色じゃん」となるけれど、その灰色にも濃さがあって、『人によってどんな灰色に見えるかは違くない?』と。

 

著者の又吉さんは「『イエス』と『ノー』以外にも答えがあってええのよ」と考えている人じゃないかな?と感じました。

でも、時間は限りがあるから答えは出さないといけないとも考えていて、その葛藤やモヤモヤみたいなのが凄く伝わってくる作品でしたね。

 

明確に『コレが答えだ!』と言ってないから、意味がよくわからないという感想を持つ人の気持ちはわかるし、かといって全く分からないということもない。私は、、、じわっと伝わってくるものがありました。

おそらく『経験値』とか『知識』の有無で『火花』の理解度は変わってくるような気がします。

私の周りには神谷みたいな人はいないですが、元々お笑いが好きなので神谷みたいな人をイメージできます。

特定の誰かはないけれど、『昔のいわゆる芸人さん』みたいなイメージができるので、徳永や神谷の心理が面白く感じました。

 

もし、『火花』を読んでよく意味が分からなかったのなら、神谷のような人物に出会うか、お笑いについて触れてみると、「よくわからない」から「何となくわかる」ようにはなると思います。

ただ、スッキリとした気分で『火花』を語れるようにはならないかな?

もしそういう人がいればその人は、純文学やお笑い、人の心理などによほど深い造詣があるか、、、常識はずれの人、いわゆる『ぶっ飛んでる人』かもしれません。

『火花』から感じる美しさの正体

『火花』を読んでいて私はどことなく『美しさ』を感じました。

文章の表現の美しさもありますが、それ以上に構成の美しさに私は目を引かれたのですね。

感想文でも触れたように対照的なもの、反対側にあるものを使って表現力を豊かにしているところに、ただただ「美しいなー」と感じました。

 

例えば、タイトルになっている『火花』という言葉からは人間同士のぶつかり合いをイメージしますが、それを反対にした『花火』という言葉には人間では敵わない圧倒的な大きさを感じます。

冒頭の熱海の営業は『花火』のシーンから始まり、終わりのシーンも同じく『花火』の描写がありました。

『花火』の存在を引き合いに出すことで、人間同士の『火花』の空しさ、でも瞬間的な光の強さが際立ちますし、こういった構成の美しさを感じたから「対照的な存在を意識して感想文を書こう」と考えてみたのですね。

 

『火花』というタイトルとそれを反対にした『花火』という言葉の対比だけで、物語が広がる。。。又吉先生~(≧◇≦)スゴスギル-

表紙のイラストの意味は何なのか?

『火花』の小説の表紙に描かれているイラスト、赤い布のようなもので覆われている独特なイラストをしていますが、調べてみたら『イマスカ』という西川美穂さんが描かれた作品だと知りました。

ちなみに、インタビューではこのように解説されていました。

中に人がいるかいないのかが分からない曖昧部分を表現しています。

引用元:西川美穂インタビュー記事-tagboat

『曖昧さ』というのは『火花』を読んでずっと感じる気持ちでしたが、表紙からも小説のイメージが感じられる作品が選ばれていたのですね。

うーん…この赤い布のようなもの中身が気になってしまいますが、実際に中に人やモノがあるとは限りませんし、でもタイトルが『イマスカ』なら、中に人がいるのかもしれない…。

 

とりあえず、すっごくいろいろ考えて、考えて、この布をバッとめくった瞬間がきっと一番楽しいだろうなーとは思いました(´▽`)

その瞬間は『火花』ですね。

『火花』のお気に入りシーン~あの漫才が教えてくれた大発見~

漫才師のイラスト画像『火花』は全体が美しいのですが、お気に入りのシーンを挙げるとするなら、やはり最後の漫才のシーンでしょう。

漫才と言う人と人とのぶつかり合いが起こす一瞬の輝きに、この物語の本質が詰まっている気がします。

 

漫才は「あえて反対のことを全力で言うことで、明確に想いが伝わる」という内容。

これは生きにくいと感じている人たちに向けた明確な答えを提示していると私は感じました。

 

人はポジティブに物事を考えた方がいいに決まってます。自分を全力で肯定できるなら、人生はきっと楽しいと思う。

ですが、ネガティブな思考や発想を全く持たないという人は少ないでしょう。

私もどちらかと言えば、ネガティブな発想を持っていて、常に「自分がやっている事や言っていることは本当に正しいのか?」と疑っていますし、きっと多くの人が徳永のように悩みながら生きているはずです。

それはおそらく、物事や人生には明確な正解はないし、仮に正解があったとしても人それぞれ違っているもので、全員が納得する正解なんてないと考えているから。

 

けれどもあの漫才は、あえて想いとは反対のこと(間違っていること)を全力で言うことで、正解を導き出すことをしている。

『犯罪を犯してはいけない』『故意に人を傷つけてはいけない』など、間違いは全員が共通認識しているもの。「犯罪を犯せ!」「人を傷つけろ!」は大不正解の言葉。でも、実際はそれが反対の意味になる。

つまり、これから言う事は反対の意味になるという前提の中で間違いを全力で叫ぶことは、全員が共通して感じる大正解になるということ。

これは…大発見というか、真理だと思う。

 

「ネガティブ寄り(マイナス思考)な人は無理にプラス思考なんてならなくていいんだよ。『マイナス×マイナス』でもプラスになるよ」みたいな?

マイナスからプラスの答えを導くこの発想は、きっとたくさんの人を勇気づけてくれるのではないでしょうか。又吉先生~(≧◇≦)スゴスギル-

相反するものが交わった時の爆発力はえげつない

『客席から啜り泣く声が聞こえてきた。皆、笑いながら泣いている。』

引用元:『火花』126ページ11行目

笑いながら泣く。

2つの相反する感情が同時に生まれるなんて、本来はあり得ないはず、でも存在している。

2つの対極の存在がぶつかる時、1つの答えが見つかるという事実は、漫才や小説の枠には収まらない、人間が生きていく上でずっと悩み続ける本質のような気がしました。

私の頭ではうまく伝えられないのがもどかしいですが、何となくでもイメージが伝わるように、いつかの『しくじり先生』の話を引用します。

 

ゲスト先生の間寛平さんが『連帯保証人になって借金地獄を見ないための授業』をしたのですが、その時に、まだ小さい娘さんと一緒に船から海に飛び込んで心中しようとしたエピソードを話しました。

そして、いざ飛び込もうとした時、娘さんがギュッと寛平さんの手を握り、そこで思いとどまってもう一度頑張ろうと決意をしたそうです。

この話をした後、当時娘さんと一緒に撮った写真が映像で流れました。

その写真を見て寛平さんが一言。

「…ブサイクだな」と。

確かに太陽がまぶしかったのか、娘さんは顔をしかめていたのですが、あんなに素敵な話をした後にコレ言えますか?Σ(゚Д゚)笑

当時この放送を観てた私は泣きながら爆笑しましたし、その瞬間はなんか最高の気分でした。

これ以上ない緊張と緩和。涙から笑いに切り替わったその瞬間は最大級の幸せを感じられました。

 

この話が伝わったかはわかりませんが、相反するものが交わる瞬間の爆発力はえげつないくらいのパワーがあるということ。

『火花』というのはその瞬間のことなのかな?と思います。

 

もちろん、漫才の内容だけでなく、漫才中に放った言葉や表現にも面白さを感じる部分がありました。

例えば、徳永が「死ね!」と連呼する部分に、冒頭であほんだらの漫才で神谷が言った「地獄」という言葉を連想。

そこに徳永が自分とは真逆の人間の感性を取り入れたと感じて、『徳永は神谷さんの影響を受けて、自分なりに昇華したんだろうなー』と感じて、感慨深くなりました。

ほかにも「敢えて、一瞬の間を置こう」の文章表現に、『そっか、この漫才は現実じゃないんだ。虚構の世界にいたんだ』と勘違いしていたことに気づいたり、純粋に「漫才って…すごい」となりました。

 

そういえば、漫才シーン終了後の結末に関しては賛否分かれてたみたいですが、私は賛成の方。

モヤモヤした気分で物語が進んで、漫才のシーンでモヤモヤが晴れて、でも結局最後はモヤモヤした気持ちになって、「生きるってそういう事なんだろうな」と。

 

最初から最後まで構成の美しさに、ただただ言葉を失いました。又吉先生(´-ω-`)スゴスギル

又吉直樹の考えから学ぶ、今の自分に必要なもの

『火花』の主人公の徳永は、おそらく又吉さん本人がモデルになっていると思います。

綾部さんと『ピース』を結成する前は『線香花火』というコンビを組んでいましたが、もしかしたら前のコンビでの活動が作品に反映されているのかもしれませんね。

 

私は他人に対してあまり関心がないのですが、又吉さんはすごく気になる存在でした。

それはサッカーをやっていたなど共通点があったり、考え方などが何となく似たようなジャンルの人かなーと感じていたから。

ただ、両者には圧倒的な力の差があって、私は又吉直樹の爪の垢にもなっていないと思い知らされましたが(^^;)

 

けれども、それで終わりたくはないので「何が違うんだろう?自分には何が必要なんだろう?」と考えてみました。

…私と又吉さんで圧倒的に違うのは『芯』の部分かなと。

『火花』が大ヒットした時期、何かのテレビ番組で又吉さんは「サッカーは高校でやめて、卒業後はお笑い芸人になる」という事を話していた気がします。

それはずっと決めていたことで、スパッと切り替えて別の道を進んだそう。

又吉さんはすごく考えている一方で、根本の部分、『芯』の部分では強くて揺るぎない意志を持っている方なのだと思います。

又吉さんは『意思』と『意志』を持っている方、でも私は『意思』はあるけど『意志』がない。

 

絶対に成し遂げたい何かが今の私にはない。ここに人間力の差、つまり圧倒的な差がある気がします。

なので、ココ(成し遂げたいこと)が見つかれば、少しでも現状は変わるかもしれませんね。

 

でも、何だろうね。。。成し遂げたいことって。遠くにはない気はしてるけど。。。

 

うーん…ちょっと探してみます^^

まとめ

『火花』の読書感想文などを書いてみました。

相変わらず分かりにくい文章で辟易しますが、書くこと自体は楽しめているので良しとします。

『火花』は解釈が難しくて、「自分の感想が間違っているんじゃないか?」とも思いますが、素直には書いたので良しとします。

 

答えがないものが好きな私ですが、一瞬でも「これが答えだ!」という瞬間を感じる事の大切さみたいなものを、この作品から学べた気がします。

 

そして、ずーっと自分に自信を持てていない日々ですが、又吉さんは「今はそれでもええんやないの?」と言ってくれたような気がしました。

そう感じただけでも、再び読む価値はあったのかなと思います^^

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