ケツメイシを聴くと唯一無二という感じがしませんか?
ジャンルで言えばヒップホップとなると思いますが、他のヒップホップアーティストとは何かが違う、でもその何かがわからない。
言い換えると「ケツメイシっぽいなーって感じはわかるけれど、そう感じるのは何でなの?」ということ。
この謎を私なりに勝手に分析していきますので、ケツメイシらしさの正体を一緒に考えてみましょう^^
『ケツメイシらしさ』の前提はジャンルに収まらないところ
ケツメイシはジャンルで言えばヒップホップだと思うのですが、ゴリゴリのヒップホップというジャンルよりも『ケツメイシ』というジャンルの方がしっくりきます。
サザンオールスターズやMr.Childrenのジャンルがロックというよりも『サザン』や『ミスチル』というジャンルの方がしっくりくる感じに近いかな。
ヒップホップアーティストの中でこういった印象を持たせるのはあまり思い浮かばないので、その珍しさからもケツメイシらしさは際立っているかもしれません。
けれども、ケツメイシがサザンやミスチルのような圧倒的な存在感で唯一無二なのかと言われたら、それはまたちょっと違うような気もします。
じゃあケツメイシが唯一無二と感じる理由、ケツメイシらしさの正体とは一体何なのか?
その正体を突き止めるカギとなる曲がありますので、その曲をヒントに謎を解いていきましょう!^^
謎解きのカギは『ケツメの作り方』に隠されている?
ケツメイシらしさの謎を解く上でカギとなる曲があります。それは『ケツノポリス2』の11曲目に収録されている『ケツメの作り方』という曲。
実際に聴いてみて欲しいですが、ざっくり言えばこの曲は「ケツメイシ結成の歌」となります。
ラップなのか駄洒落なのか分からないリリック(ラップ詞)でも唯一無二の感じはしますが、その中でも注目してほしい歌詞があります。それは大蔵さんが歌うこの部分。
『ライムスター・キングギドラ・ペイジャー 歌詞覚えた 全てを歌えた』 引用元:ケツメの作り方-ケツメイシ-歌ネット
ライムスター、キングギドラ、ペイジャー(マイクロフォン・ペイジャー)と言えば90年代初頭の日本語ラップ黎明期から活躍したレジェンドたちで、日本語ラップの技法を生み出した教科書を作ったとも言えるアーティスト。
この歌詞から分かるのは『初期のケツメイシは元々レジェンドたちの曲を聴いて真似したり歌ったりしてラップを楽しんでいた人たち』だったわけです。
けれども、ここで気になることはありませんか?
それは『ケツノポリス2に収録されている曲の多くはレジェンドたちが歌う曲とはちょっとテイストが違う』ということ。
ライムスターなどははっきりヒップホップというジャンルに分けられますが、ケツメイシはヒップホップではあるけれどもポップスに寄っています。
曲を聴くと確かに、ケツメイシはレジェンドたちと比べると『大衆向けである』というのを感じられませんか。
それを表しているのが『ケツメの作り方』の最後に出てくる『こっちおいで』の歌詞。
「こっちおいで」という言葉の裏には「一緒に楽しもうよ」という意味が含まれていますよね。要するに『大衆に向けて歌っている』ということ。
今でこそ日本語ラップはアンダーグラウンドとは呼べないくらい人気がありますが、おそらく当時はまだコアなファンしか日本語ラップに触れることはなかったはずですし、一般の人からしたら全く知らない(知ろうとしない)世界で、何となく怖い存在というイメージもあったはず。
そんな中でケツメイシは「僕たちはラップをやってますが、怖い感じのグループではないんですよー。むしろ皆で盛り上がりたいって思ってます。だから、見てるだけ聴いてるだけの人がいたら、こっちにおいで今日は子供に戻って朝まで一緒に踊ろうよー」と歌っているのです。
従来のヒップホップのイメージではなかった新しさをポップス要素を入れることで作っていたのですね。
コレがケツメイシがゴリゴリのヒップホップアーティストではないと感じる理由の一つと考えられるでしょう。
ヒップホップという一つのジャンルに収めるのは違和感を覚えさせているわけです。
そして『ケツメの作り方』に関してはもう一つ重要な役割を果たしていると推測できるのですが、その点について次で考えてみましょう。
『ケツメの作り方』がケツノポリス2に収録されている意味
『ケツメの作り方』が収録されているのは『ケツノポリス2』ですね。
『ケツノポリス2』はケツメイシとしては2枚目のアルバムですが、メジャーデビューしてからは1枚目のアルバムとなります。
実際にアルバムを聴いてみると、ケツメイシらしさのある曲がたくさんありますよね。
卓球の音が収録されている曲があったり、ヒップホップユニットのアルファと歌う『ア・セッションプリーズ』もありますが、それ以外の歌モノは全体的にヒップホップとポップスがハイブリッドされた曲になっています。
それを踏まえた上で『ケツメの作り方』を聴くと、この曲だけ他の曲と比較して違和感がありませんか?
ポップスっぽさがほぼ無くてヒップホップ要素が強く出てません?
これは推測ですが「僕たちは元々は『全てを出し尽くす』ゴリゴリのヒップホップをやっていて、そこにルーツがあるんですよー。でも、今はたくさんの人に曲を届けるために聴きやすい曲を作っているからみんな聴いてねー」と主張している曲でもあるのかなと。
おそらくケツメイシは、どこかのタイミング(インディーズ時代からメジャーデビューするまでの期間?)でイメージが確立されていたいわゆるヒップホップのジャンルから外れる覚悟を決めたのだと思います。
そうせざるを得なかったのか、意図的に外れたのか、4人のバランスを考えたらそこに落ち着いたのかはわかりません。
ただ、ヒップホップとポップスのちょうどいい塩梅で曲を作り歌うことで「音楽の世界で勝負する」という決断をしたと感じてます。
ケツメイシというアーティストは『サラブレッド』ではなくて『ハイブリッド』なのですね。
しかも、ヒップホップとポップスというベースだけでなく、そこにレゲエやダンスはもちろん、ボサノバやハワイアン、ラテンなど様々な曲調をさらに加えていくので独自性がどんどん出てくるわけです。
その結果、どこにも属さないケツメイシらしさを感じられるようになったではないでしょうか。
しかし、いろんな曲調の曲を作るというのは逆に独自性をなくしてしまうような気もしますよね。確固とした軸がなければ、ただ器用なだけということにもなりかねません。
けれどもケツメイシはただ器用なだけのアーティストではない。じゃあそれはなぜなのか?それは歌詞に秘密があるからと思っています。
というわけで、次はケツメイシらしさの正体を歌詞から迫っていきましょう!
ケツメイシらしさの軸となる「歌詞」の秘密
ケツメイシの歌詞の構成は、メロではラップを歌ってサビはあまり韻を踏まないポップスっぽい曲が比較的多いです。
ラップが基本軸にはなっているのですが、サビではポップス寄りにすることで、ここにもハイブリッド要素を入れているわけですね。
そして、曲のテーマに沿って歌詞があるわけですが、この歌詞の個性と全体のバランスが絶妙なので、どんな曲調であっても器用なだけにはならないでケツメイシらしさが生まれてくるのです。
ケツメイシはそれぞれがリリックを書いていますが、ラップはその人の考え方や人間性がもろに出ます。
なので当然歌詞に個性は出ますが、加えてラップスキルも関係してより個性が際立つのですね。
ざっくりしたメンバーのラップの印象ですが、全員ラップが上手いのは前提としてRYOさんは長めのライミング(韻を踏む)、Ryojiさんはメロディアス(美しいメロディ)、大蔵さんはフロウ(歌いまわし)に特徴があるかなと。
それぞれの個性が出たリリックがあって、それをハイブリッドさせて全体のバランスを取ることでどんな曲調であってもブレない軸ができるわけです。
結果的にケツメイシらしさが生まれるということですね。
ここからは蛇足ですが、歌詞の構成やケツメイシの歴史から推測すると、ケツメイシらしさのキーマンになっているのはRyojiさんなのかなーと。
もともとRYOさんの仲間や大蔵さんがケツメイシの母体となって、後にクラブでKOHNOさんやRyojiさんと出会って今のケツメイシが結成されました。
サビを歌うことが多いRyojiさんがボーカルを任されていて、そのサビをポップス寄りの歌詞にすることでケツメイシのオリジナリティが際立っている。
もしかしたら、Ryojiさんが持つメロディメーカーの部分はケツメイシがヒップホップグループの枠に収まらない重要なポイントだったんじゃないかなと。
もちろん、4人のバランスがあってのケツメイシではありますが、『ケツメの作り方』の最後でRYOさんがRyojiさんに向かって「今日からボーカルだから」と言って『こっちおいで』が歌われることに、何か意味があったのかもしれません。
さすがに深読みな気はしますが。。。。
私が思う『ケツメイシらしさ』の正体!
『ケツメイシらしさ』の正体、それは一言で言えば『あらゆる面でハイブリッドである』と私は思っています。
ヒップホップとポップスのハイブリッドであり、そこに様々な曲調を加え、さらにメンバーそれぞれの個性が出るリリックのバランスを加えて軸が生まれる。
こういったところがケツメイシらしさの正体なのではないでしょうか。
それと時代も味方していたのかなとも思います。
今でこそヒップホップとポップスのハイブリッドは珍しくないですが、あの時代にヒップホップとポップスをハイブリッドさせたアーティストはまだ少なかったのではないかと。
パッと思いつくのは『KICK THE CAN CREW』や『RIP SLYME』とかですか?ケツメイシの方がよりポップス要素が強いかもしれません。
いずれにせよ、まだ未開拓だった時代に未知の方向に舵を切った覚悟がカッコいいですよね。
そこから5年、10年、15年、20年、25年と積み重ねてきたわけですから、ケツメイシが唯一無二と言えるのも必然でしょう。
最後に、ケツメイシを一言で表現するなら『変態』だということ。…これだと悪口と捉えられてしまいますか。笑
もとい『したたかで戦略家』だということ。
ラップというのはバイブス(熱量)がものすごく伝わるので、聴き手はどうしても表面上の言葉だけを受け取ってしまいます。「いい歌詞だよねー」「この部分のラップ面白いよねー」など。
ケツメイシの曲を「ストレートな(分かりやすい)歌詞が素敵なアーティスト」と感じているファンはたくさんいますし、それは間違いないと思います。
けれども、その裏には表面上では伝わらない想いや戦略が隠されているわけです。私なんかじゃ気づけない仕掛けもたくさんあるはず。
ストレートな歌詞の裏にはただ曲を聴くだけ、ただ歌詞を読むだけではわからない『見えない神秘的な』一面も隠されているのですね。
にも関わらず、そういった雰囲気を全く見せようとしないし、感じさせようともしない。それどころか、『たまに言いことを歌うふざけたおじさんのイメージ』が定着している。
この変態さ、最高でしょ?
※これは私の勝手な分析です(*´ω`*)
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